羊と虎
その頃凱も明日の事で頭を悩ませていた。
この話が出たのが先週の土曜日の事だった。
慧に呼ばれて慧のマンションを訪れた時の事を思い出す。
「あれから進展はあったのか?」
突然そう聞かれて、何の事か一瞬分からなかったが、杏奈との事だと思った。
「ちょっとだけ・・・」
金曜の事を思い出して苦笑する。
『あれが、進展・・と言えば進展だ』
「無かったと同じって事だな」
「有ったって」
「手繋いだとか、そんなレベルだろ」
馬鹿にしたように笑う慧に、少しムッとしたが、顔には出さなかった。