羊と虎

「言っている意味が分からないんだが」

何かを待っている事は分かるが、それが何かまでは分からず、このままココに居ていいのか迷う。

「今回のお見合いは、時間が重要なの。」

多分自分より年下の筈なのに、独自の雰囲気に気圧されそうになる。

得体の知れない生き物の様で、本能的に危険を感じる。

「誰かを待っているのか?」

それでも、弱みを見せる事は出来ないので、平成を装って会話を続ける。

「そうね、来るかどうかは分からないけど」

『もしかして、麻生さんには恋人がいて、恋人が迎えに来るのを待っている?
でも、恋人が居たら見合いはしない・・筈』

時間が重要な見合いにやってくる相手を待つべきなのだろうか?

チラリと麻生を見ると、動じた風も無くゆったりと寛いでいた。

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