羊と虎
「ここね、見晴らしが良いでしょ」
そう言われてラウンジを見渡すと確かに周りが良く見えた。
席が離れていてBGMも流れているので普通に話しても、近くの席の声は聞こえない。
「えぇ。それがこの場所を選んだ理由?」
探るように質問すると麻生は頷いた。
チラリと腕時計を見ると時間丁度だった。
一体何が起こるのか、相手の様子からは窺い知れない。
この先どうするか考えあぐねていた時、よく知った声がラウンジに響いた。
「凱!!」