羊と虎

「!・・・あん・・な」

自分を呼ぶ声の方を見ると、入り口に杏奈の姿があり驚いた。

「あら、来てくれたのね。良かったわ」

驚いた様子も無く、凱を見て笑う。

「え?どういう・・」

「凱!」

今の状況を把握しようとするが、杏奈の事が気になり上手く行かない。

その間に杏奈は大股で鬼気迫る勢いで凱に近づいてくるので、フロアに居る客がチラチラとこちらを見ている。

凱は麻生を見るが、麻生はコーヒーを飲んでいて我関せずだ。

遂に二人の席まで到着した杏奈が、息を整え口を開く。
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