羊と虎

忙しい日々を繰り返して何とか大会に出たが、やっぱり練習量が圧倒的に足らなくて、5位止まり。


トホホな結果に終わった。

『何やってんだろう』

抜け殻のようにやる気が無くなってしまった毎日、辛うじてミスを出さなかった事だけが救いだ。

ただ、モチベーションの下がったまま、仕事をこなしていたので、残業が増えてしまう。

「何か弛んでない?」

「!?」

ビクリと飛び上がる程驚いて、ふり替えると山葉が居た。

「何?彼氏と別れた?」

「へ?」

聞きなれない言葉にボーとしていた頭は、遂にフリーズしてしまう。

「違うの?あんまりボーっとしてるから、彼氏と別れたのかと思ったんだけど」

そう言いながら、私の良く飲む銘柄の缶コーヒーを手渡ししてくれた。

鈴木と違い、山葉の方が、こういう気遣いが出来る人だった。
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