羊と虎
「また、携帯なってるぞ」
折角機嫌が戻ったのに、また機嫌が悪くなる山葉は、ビールを一気に飲み干した。
「へ?あ、あぁラインです」
メッセージを見ると凱からで、駐車場に着いたと書いてある。
でもまだ、鈴木さん来てないんだよね。
もう少し待ってもらうように素早く返信する。
「何、友達に急かされてるのか?」
「そんな事ないですよ」
目が泳いでしまい、見えない戸口に視線が向う。
ほぼ満席の店内はタバコと酒と料理の匂いでむせ返っている。
『会社の人が居ないのは助かるけど、鈴木さん早く来て!
山葉さんの相手はもう無理です。』
次の注文のビールが届いて、山葉が豪快に飲み始める。
『喉仏が飲む度に動いて男らしいと思うけど、今はそんな場合じゃない!鈴木さん早く来て!!』
山葉の方を見てオロオロしてしまう。