羊と虎

「また、携帯なってるぞ」

折角機嫌が戻ったのに、また機嫌が悪くなる山葉は、ビールを一気に飲み干した。

「へ?あ、あぁラインです」

メッセージを見ると凱からで、駐車場に着いたと書いてある。

でもまだ、鈴木さん来てないんだよね。

もう少し待ってもらうように素早く返信する。

「何、友達に急かされてるのか?」

「そんな事ないですよ」

目が泳いでしまい、見えない戸口に視線が向う。

ほぼ満席の店内はタバコと酒と料理の匂いでむせ返っている。

『会社の人が居ないのは助かるけど、鈴木さん早く来て!

山葉さんの相手はもう無理です。』

次の注文のビールが届いて、山葉が豪快に飲み始める。

『喉仏が飲む度に動いて男らしいと思うけど、今はそんな場合じゃない!鈴木さん早く来て!!』

山葉の方を見てオロオロしてしまう。
< 45 / 320 >

この作品をシェア

pagetop