羊と虎
「はぁ、もう出来上がってんのか」
頭上で盛大なため息が聞こえたから、見上げると鈴木さんが居た。
この時ばかりは、鈴木さんが救世主に見えるた。
「鈴木さん!!
お疲れ様です!すみません無茶振りにつき合わせて」
「おう!やっと来たか。おせーぞ」
山葉も鈴木に気付き、赤い顔に笑みを貼り付けて話す。
その笑みが黒く見えるのは気のせいだろうか。
「悪かったな、こんなのの面倒見させて」
苦笑しながらそう言うので、杏奈は慌てて立ち上がり、奥の席を勧める。
「いえ、私を元気付ける為に連れてきてくれたんですから。
でも、ちょっと用事が入ってしまったので、申し訳ないですが鈴木さんにお任せてしても良いですか?」
すみませんとお辞儀をしていると、刺身が運ばれて来た。