羊と虎
「あぁ、お疲れさん。山葉は放っておいていいから」
そう言いながら、上着を空いている椅子の背もたれにかけながら、行って良いよと手を振る。
「あの、これ・・足りるかどうか分からないですが」
「あぁここは山葉の奢りでいいだろ」
財布からお金を出した私に、ニヤリと笑ってそう言うと、山葉さんの飲みかけのジョッキを奪って飲みだした。
「あ、すぐに注文しておきますね。それでは失礼します!」
何か言いかけた山葉を無視して、ペコリとお辞儀をしてその場を離れる。
途中店員を探しビールの注文をしてから店を出た。
7月に入って日中は蒸し暑くなってきているが、流石に夜は涼しい。
タバコとお酒と料理の匂いでむせ返るような店内から、開放されてホッ一息ついた。
それから、もう一度メッセージで駐車場の場所を確認してから駐車場に向うと、見慣れた車が止まっていた。