羊と虎
『あぁ情けないなぁ取締役にこんな所見られるなんて』
そう思う反面、酒の所為で思考があやふやになっている。
「・・・ちょっとプライベートで凹んでて、それで仕事でも上手く行かなくて、先輩に気遣われて・・・何やってんだろう」
口を開くととり止めも無く言葉があふれ出して、収集がつかないのに、止める事が出来ない。
「出来ると、思った・・のに・出来・・なくて。ダメだ・・情け・・ない」
気持ちが暴走して涙腺まで緩んで来てしまった頃、頭に大きくて暖かい物が乗った。
それが、凱の手だと分かるのに数秒かかったのは、かなり酔いが回っている所為だろう。
「自分の持てる力を出し切ったのなら、後悔するな」
ワシャワシャと頭を撫でながら凱がそういった。
「反省したら、頭を切り替える。何時までも後悔していては時間の無駄だ」
何か言おうと口を開くと泣きそうだったので、コクコクと頷いた。