羊と虎

『本当に幸せ者だと最近気付いたなぁ』

嬉しくてニマニマしながら、ビールを飲む。

ビールの味も格別だった。

「美優ちゃん!私に出来る事があったら、言ってね!」

「杏奈ちゃ~ん!」

急に杏奈の名を呼んだので、美優の顔を見ると、半べそをかいて真っ赤の顔をしていた。

どうやら何時の間にか出来上がっていたようだ。

「どうしたの?」

やっと用件を話す気になったのだと思い、少し落ち着いた声で聞き返すと、美優がポツリ、ポツリと話し出す。

「!? 本田さんが!? あ、ごめん」

冷静に聞こうと思ったのだが、あまりの事に大きな声を出してしまい、慌てて口を閉じた。

「え、と・・・つまりは、終業後、ゲームのイベントを確認してたら前を見てなくて、誰かにぶつかったらそれが本田さんで、ゲームやってる事がバレたと・・・」

何とか最後まで聞いた杏奈は、冷静さを保つ為に、美優の話を要約して確認してみた。
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