羊と虎

感情が治まるまで暫く撫でられていた。

「本田さん・・・男前過ぎる」

「小鳥遊は良い女だと思うぞ。まぁ俺の好みじゃないけど」

顔を上げてやっと搾り出した言葉を、あっさりと笑いに変える。

「ヒドッ」

しんみりしていた雰囲気が一瞬で終わりをつげる。

『まぁ私も好みじゃないですけどね』

と心の中で悪態をつく。

「美優に伝えてみます。あの子も変らないとと思ってるから、本田さんが良いきっかけになりそうです」

やっと話が終わり、分かり合えたお陰で、素の自分のまま本田と過ごせて、リラックスした時間が持てた。

『あぁ、またこんな感じで食べに行けたらなぁ』

お開きになった帰り道、ほろ酔い気分で空を見上げながらそう思った。
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