不良に恋した私 ~Is there love in the air?~
11、後悔はしたくない ~Is there love in the air?~
夏休み間近。
今日は夕方にお父さんの恋人、
美佐子さんが、家に来ることになっていた。
学校は休みだったが、私は昼過ぎに、ちょっとだけ出かけてくると家を出た。
父親から、大事な話があるから、なるべく早く帰って来て欲しいと言われていた。
十中八九、結婚の話だろう。
私は丸山くんに「後悔しねぇように、元気なうちに祝福してやれ」と言われたことを思い出していた。
でも、嬉しい気持ちを素直に言葉に出来るか不安だったので、二人に何かお祝いを買って帰ろうと思った。
私がデパートに入ろうとした時、誰かに後ろから声をかけられた。
「美弥ちゃんよね?」
振り返るとそれは、丸山くんのお母さんだった。
「やっぱりそうだわ。久しぶりね。元気にしてた?」
「はい。私は元気です。お母さんの方は、あれから、体の調子はいかがですか?」
丸山くんのお母さんは仕事帰りだろうか。
少しだけ疲れた顔をしていたが、顔色はよさそうだった。
「ありがとう。おかげさまで、もうすっかり元気よ。
美弥ちゃん、立ち話もなんだから、よかったら、どこかで甘いものでも食べない?」
丸山くんのお母さんに誘われて、近くの喫茶店に入った。
「ありがとうね、美弥ちゃん」
突然、丸山くんのお母さんにお礼を言われて、
何のことだかさっぱりわからなかった。
「私、お礼を言われるようなことは何も……」
「理人、最近、笑顔が増えたのよ。美弥ちゃんがそばに居てくれるお陰だと思うの」
私はただ、丸山くんのそばにいるだけで、本当に何もしてあげられていない。
「私、一緒にいることくらいしか出来なくて……支えるどころか、丸山くんに甘えてばかりで……」
「それでいいのよ。美弥ちゃんがそばにいることが、理人の自信に繋がってるみたい。そのお陰か、……タバコを我慢してる姿を最近よく目にするようになったの」
「お母さん……」
やっぱり気がついていたんだ。
たとえ血が繋がってなくても、あんなに仲よさそうな親子が、丸山くんがタバコを吸ってることに、気がついてないはずはないと思った。
「……一年程前にね。理人が、親しくしてた子が、急に亡くなってしまったの。身近な人の死はあの子には堪えたみたいで、すっかり落ち込んでしまって……」
丸山くんのお母さんは当時のことを思い出したのか、すこし涙ぐんでいた。
「あの時……あの子の……心がね。このまま壊れてしまうと思ったの。だから……タバコを吸うことで、理人の心のバランスが取れるならと、駄目なのはわかっていたけど、目をつむってしまったの……。ああ、でも、そんなのただの言い訳にしかならないわね。……本当、母親失格ね」
私は首を何度も横に振った。
丸山くんのお母さんに自分を責めないで欲しいと思った。
「私、丸山くんに出会って、大切なことをいっぱい教わったんです。だから、私もずっとそばにいて、丸山くんの力になりたいです」
「……ありがとう、美弥ちゃん」
私は丸山くんのお母さんと別れると、両親へのプレゼントを買って慌てて家に戻った。
もう夕方になっていた。
家に帰ると、美佐子さんが用意したのか、食卓には素敵な料理が並んでいた。
父親に、座るように言われ、席に腰を下ろした。
その場の空気に緊張が走った。
言い出しにくそうにしている二人に、私はさっき買ってきたプレゼントを差し出した。
「おめでとう」
二人は驚いて、顔を見合わせた。
「結婚……するんでしょ?」
私の言葉に、父親が不安そうに尋ねた。
「結婚して、いいのか?」
「ご飯……もう私が作らなくてもいいんでしょ?」
私はいつもみたいに嫌味っぽくならないように、なるべく笑って言った。
「私が……作ってもいいの?」
気持ちが通じたのか、美佐子さんが嬉しそうに微笑んだ。
「お母さんでしょ?」
私のその言葉に、美佐子さんの目からは涙が溢れていた。
「ちょっと、泣かないでよ~」
私はポケットにあったハンカチを美佐子さんに差し出した。
「ありがとう。美弥……」
お父さんも嬉しそうに微笑んでくれた。
「喧嘩とか勘弁だからね~。居場所に困るから」
私は照れるのを隠すように二人に言った。
「しないよ」
っと、二人同時に同じ台詞を言った。
この二人は、どれだけ仲がいいのを見せ付ければ気がすむのだろうか。
「ああ~、でも、やっぱり、ラブラブ過ぎるのも嫌かも」
今度は二人の顔が同時に真っ赤に染まった。
その日から、私の家族は三人になった……。
今日は夕方にお父さんの恋人、
美佐子さんが、家に来ることになっていた。
学校は休みだったが、私は昼過ぎに、ちょっとだけ出かけてくると家を出た。
父親から、大事な話があるから、なるべく早く帰って来て欲しいと言われていた。
十中八九、結婚の話だろう。
私は丸山くんに「後悔しねぇように、元気なうちに祝福してやれ」と言われたことを思い出していた。
でも、嬉しい気持ちを素直に言葉に出来るか不安だったので、二人に何かお祝いを買って帰ろうと思った。
私がデパートに入ろうとした時、誰かに後ろから声をかけられた。
「美弥ちゃんよね?」
振り返るとそれは、丸山くんのお母さんだった。
「やっぱりそうだわ。久しぶりね。元気にしてた?」
「はい。私は元気です。お母さんの方は、あれから、体の調子はいかがですか?」
丸山くんのお母さんは仕事帰りだろうか。
少しだけ疲れた顔をしていたが、顔色はよさそうだった。
「ありがとう。おかげさまで、もうすっかり元気よ。
美弥ちゃん、立ち話もなんだから、よかったら、どこかで甘いものでも食べない?」
丸山くんのお母さんに誘われて、近くの喫茶店に入った。
「ありがとうね、美弥ちゃん」
突然、丸山くんのお母さんにお礼を言われて、
何のことだかさっぱりわからなかった。
「私、お礼を言われるようなことは何も……」
「理人、最近、笑顔が増えたのよ。美弥ちゃんがそばに居てくれるお陰だと思うの」
私はただ、丸山くんのそばにいるだけで、本当に何もしてあげられていない。
「私、一緒にいることくらいしか出来なくて……支えるどころか、丸山くんに甘えてばかりで……」
「それでいいのよ。美弥ちゃんがそばにいることが、理人の自信に繋がってるみたい。そのお陰か、……タバコを我慢してる姿を最近よく目にするようになったの」
「お母さん……」
やっぱり気がついていたんだ。
たとえ血が繋がってなくても、あんなに仲よさそうな親子が、丸山くんがタバコを吸ってることに、気がついてないはずはないと思った。
「……一年程前にね。理人が、親しくしてた子が、急に亡くなってしまったの。身近な人の死はあの子には堪えたみたいで、すっかり落ち込んでしまって……」
丸山くんのお母さんは当時のことを思い出したのか、すこし涙ぐんでいた。
「あの時……あの子の……心がね。このまま壊れてしまうと思ったの。だから……タバコを吸うことで、理人の心のバランスが取れるならと、駄目なのはわかっていたけど、目をつむってしまったの……。ああ、でも、そんなのただの言い訳にしかならないわね。……本当、母親失格ね」
私は首を何度も横に振った。
丸山くんのお母さんに自分を責めないで欲しいと思った。
「私、丸山くんに出会って、大切なことをいっぱい教わったんです。だから、私もずっとそばにいて、丸山くんの力になりたいです」
「……ありがとう、美弥ちゃん」
私は丸山くんのお母さんと別れると、両親へのプレゼントを買って慌てて家に戻った。
もう夕方になっていた。
家に帰ると、美佐子さんが用意したのか、食卓には素敵な料理が並んでいた。
父親に、座るように言われ、席に腰を下ろした。
その場の空気に緊張が走った。
言い出しにくそうにしている二人に、私はさっき買ってきたプレゼントを差し出した。
「おめでとう」
二人は驚いて、顔を見合わせた。
「結婚……するんでしょ?」
私の言葉に、父親が不安そうに尋ねた。
「結婚して、いいのか?」
「ご飯……もう私が作らなくてもいいんでしょ?」
私はいつもみたいに嫌味っぽくならないように、なるべく笑って言った。
「私が……作ってもいいの?」
気持ちが通じたのか、美佐子さんが嬉しそうに微笑んだ。
「お母さんでしょ?」
私のその言葉に、美佐子さんの目からは涙が溢れていた。
「ちょっと、泣かないでよ~」
私はポケットにあったハンカチを美佐子さんに差し出した。
「ありがとう。美弥……」
お父さんも嬉しそうに微笑んでくれた。
「喧嘩とか勘弁だからね~。居場所に困るから」
私は照れるのを隠すように二人に言った。
「しないよ」
っと、二人同時に同じ台詞を言った。
この二人は、どれだけ仲がいいのを見せ付ければ気がすむのだろうか。
「ああ~、でも、やっぱり、ラブラブ過ぎるのも嫌かも」
今度は二人の顔が同時に真っ赤に染まった。
その日から、私の家族は三人になった……。