超レ欲ス
それから。
自慢じゃないが、俺は期待を裏切ることに関しちゃいいもん持っていると自負している。
周りにとけ込み、和気あいあいといられるように心がけるが、いつもごっそりと見事に空回りして、結局浮いてしまうのが俺って奴だ。
そんな俺もびっくりの期待裏切りっぷりを見せつけてくれる奴に、最近出会った。
いや、こいつは立ちふさがったと表現するのが正しいかもしれない。
なにせそいつの場合、裏切られるのはいつだって俺だけなのだ。
俺はこれでも空気を読む努力はしている。
だがそいつは違う。
とこのとんまで無遠慮で、自覚なく俺の一番痛いところに的確なブローをかましてくれやがるくせに、それが俺だけに効果的なもんだから、はたからは普通の会話をしているようにしか見えないのだ。
やっこさんは人気者である。
いかに努力しても空気を読みきれず周囲をしらけさせる俺と、俺のみが致命的ダメージを受けるだけで、他のみんなは平和にいられるそいつとじゃ、こと人徳なんかに関しちゃ、はなから勝負にさえもなりゃしないのである。
そいつは俺にとって天敵といえた。
そこで俺は居直ることにしてみた。
正攻法で敵わなきゃ、変化球で攻めるのみ。
そして俺は立ち止まり、隣を歩いていたその小さい肩をがっしと掴む。
で、そのままその唇に自分の唇を重ねてやったのだった。