超レ欲ス
「志田がどうかしたの?」
先ほど浜野がしてきたのと同じ質問をぶつけてくる香田。
「いや、いいの。知らないんなら」
で、おんなじ返事をしたわけだが。
「よくねえよ。ナニ?なんか揉め事?」
浜野と違ってイベントごとに関する鼻が人六十倍利く香田くんは俺の機微を見逃してくれやしなかった。
「さっき嶋村、おれにもおんなじこと訊いたね。どうしたの?」
さらには反対隣の、さっきはスルーしてくれた浜野くんまで参戦してきてしまった。
「なんだよ。なんでもないって」
俺は白々しくも笑顔なんぞこしらえながら、必死に平静を装う。
しかしそんなもの、猟犬モードの香田には通じるはずがなかったのである。
で、
「拓也、俺ら午後サボるぞ」「そうだね。先生にはおれが適当に言い含めておく。いってらっしゃい」
なぜだか例の一件以来、変に意気投合しているふたりに、お見事コンビネーションで、俺は捕まってしまったのであった。