超レ欲ス

天教寺ったら、こっから電車で五駅。

距離にしたら五キロか、いや六キロくらいあるぞ。

その間を泳いできたって?

しかも服着たまま。

……バカすぎる。

バカだバカだとは思っていたが、これは真性、正真正銘のバカだ。

「バカだろおまえ。なんでまた、そんなこと。だいたい逃げるってなんだよ?おまえの親父さん、ナイフ持って追いかけてでもきたってのか」

「や、それなんだけどさ……」

ここから志田による、さらなる意味不明解説が始まる。

「今日、オレの母親の命日でさ。墓参りしろっておやじが言って昼から早退になったの」

いきなりあっさりと爆弾発言。

「え、志田んち、母さんいないの?」

と、香田。

「うん。オレが小さいころに死んじゃった」

「それは……」

……ご愁傷様です。

「そんで、寺に連れてかれたわけさ。車で。……だから、隣の川、飛び込んで逃げた」

「……え?」「なんで?」

飛び込む必要も、逃げる要素も一切なし。

ほんとなんで?

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