超レ欲ス
こんな長いこと何も構っていなかったというのに、後ろで座る香田はなぜか割と上機嫌であった。
「終わり?」
「一応。使えるようにはなった……よな?」
「ん?うん。覚えた。なんか悪かったな。こんな長いことケータイ触ったの初めてだ」
悪かったと口にしながら、全然そういったふうでもなさそうな志田。
「あのさ、おまえ説明書とか読まないタイプだろ」
「うーん。読まないことないけど、ぶっといんだもんケータイの説明書。だったらカンで動かせるところだけでいいかなって」
……もう何も言うまい。
「コイツにも礼言え。おまえ、どんだけ迷惑かけてっか、自覚ある?」
「ん?いや、別に俺は迷惑じゃないぞ。面白かったし。つーか志田さぁ、俺のこと、わかってる?」
「テルの友達だろ?同じクラスだったよな」
「うん。そうだよ。名前は?知ってる?確か、四月に自己紹介ぐらいはしたと思うんだけど」
「すまん。覚えてない。オレ、他人の名前、覚えるの、苦手なんだ」
「ムダだって香田。コイツ、俺のことだって“テル”ってあだ名でしか覚えてないし。四月に一回言ったくらいなら、覚えてるわけないって。志田、コイツの名前は“香田”だ。『こうだ!』と決めたら、そうしなくっちゃいられないから香田ってんだ」
「コウダ……そっか。悪かった。もう忘れない。ありがとう、コウダ」
と、香田に向かって左手を差し出すパンツ一丁男。