超レ欲ス
「ユタカ、怒ってるかな。返事も出さなくって」
俺は慌ててフォローのことばをめぐらす。
「い、いや、そんなことないって。怒ってたらよろしくどーのなんて言わないでしょ。うん。アイツだってこのあいだまで全然メール出来なかったんだよ?それで偉そうに返信よこさねーとか抜かすんなら、そんときゃもう俺が、川の精として一生過ごさせてやる」
「かわのせい?」
「あ……、いや、なんでもない。とにかく、キミら兄妹はべつにケンカしているわけでもないし、焦る必要ないって」
「そうかな」
「そうです」
俺がきっぱり断言すると、彼女は心なし安心したように微笑んでくれた。
「でもね、最近文字を打つのが楽しくはなってきたんだよ。やってみると、うん。自分の考えとか、まとめるのって面白いんだ。今まで私、わけのわからない一人称の本ばっかり読んでたでしょ?それと比べると、……ああ、私ってまだ、わけわかること書いてるんだぁって思えるっていうか」
「うん。浅瀬ちゃんのくれるメール、まとまってて読みやすいよ」
「ホント?良かった。今思うと、そういう本ばっかり読んでたのも、何かの逃避だったかもねって思う。……おいおい。他人様に勧めておいて、ひどい言いぐさだなぁ」
「そりゃよかったよ。だって、あんな難解なメール送られてきたら、返すまでに夜が明けちゃうもんな」
俺のつまらない冗談に、浅瀬ちゃんはくすくすと声を出すのをこらえるようにして笑ってくれた。
他愛のないこの時が、なんだかすごく楽しい。