超レ欲ス
冷房の効いた館内から一歩出ると、むあっと熱気が全身を包んだ。
「うわ、あっついねぇ。もう夏だぁ」
そう言いつつ振り返った彼女の髪が、ふわっと浮いて跳ねた。
「今年は暑くなりそうだな」
俺は平静を装いつつ返す。
すると浅瀬ちゃんは人差し指をぴんと立て、「そういえば」とこちらへ向き直った。
「そうそう。言い忘れてたけど」
「え?」
「貸し出し期限は二週間でしょ?それでね、一週間でお互い読むの。そうすると一週間あまるでしょ?その時また交換して、自分で選んだ方も読んでみる。で、返すときに感想を言い合うっていうの……、どうかな?」
「面白そうだけど、よくそんなこと思いつくね」
「アハハ。私、つまんないことばっかり考えてるからね」
「うん。じゃあ、そうしようか」
俺としては、彼女の方から関わりを保とうとしてくれるのが嬉しいわけで、そんなこと断るはずがなかった。
浅瀬ちゃんは俺の返事に満足そうな笑顔をこしらえ、
「ああ、でも勉強も忘れないでね」
すっかり忘れていたそれを、しっかりと思い出させてくれたのであった。