超レ欲ス
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余計な情景描写なんざ俺の柄でも向きでもないので極力すまいと思っていたのだが、さすがにこの光景を前にして何も申さぬわけにもいかぬので、致し方なく語ってみよう。
まずこの場所について。
ここは学校。
俺が今年の三月に死ぬ思いして、ようやく来る権利を得た、県立白古馬都《しらこばと》高校の二年C組の教室である。
刻は朝。
教室の壁に掛かっている時計を信じるのなら、八時十九分といったところ。
さて、次に周りの状況だ。
上を見れば、普通。
長い蛍光灯のぶら下がった天井があって、その上には上階があって、さらに上には曇りがちの空があることだろう。
下も同じ。
下階を挟んで地面があり、ついでにもっとうーんと下がりゃあ、陽気な地球の反対側に出てしまうぐらい普通。
右も左もいつも通り。
女の子グループがふたつほどいて、時折けらけらと笑っているのが聞こえる。
後ろでは、田辺くんと大橋くんが話している。
どうでもいい噂話に一喜一憂しているようだ。
これもまたいつもある光景といえる。
では、俺の眼前の、こりゃあ一体どういったことだろうか。