超レ欲ス

俺がいつも座る席には、いや、俺がいつも座る席が、ない。

あれ?これってもしかしちゃってまさかのいじめ?

…………いや違う。

なかったのは俺の席だけじゃなかった。

前にあるはずの志田の席も、隣にあるはずの香田の席も、ついでに、後ろにあるはずの杉田の席まで、全部所定の位置になかった。

「……何やってんの、おまえら」

「ようテル、来たか。テルもやるか?タッキュー」

でかいスーパーボールを持って嬉々と応えるは香田正人。

「あのさ、俺今来たばっかだし。鞄とか置きたいんだけど」

「おいおいおいおいー。ここはやるって言えよー、しけるなァ」

俺は絶対間違っていないことを言った。

なのに、場の空気はなんだか変な感じになってしまった。

「やるけど。さき鞄置かせろって言ってんだろ。勘違いすんなって」

なぜ俺が気を遣った発言をしてるのかまったくわからなかったが、そう言わなくてはいけない雰囲気になったので、正直うんざりしながらもそう答えた。

俺をはじめ四人の座席……いや机は、よっつ合わせてひとつのでかい長方形に固められていた。

これを卓球台に見立て、球はでかめのスーパーボールを手で打つことで、杉田と香田、それからクラスの目立つ面々は、擬似卓球を楽しんでいたようだった。

ほんとうんざりだ。

朝っぱらからどんだけ元気なの、おまえら。

< 17 / 235 >

この作品をシェア

pagetop