超レ欲ス
「なんだよ」
「いやべつに。香田がそれ持ってんのがおかしかった」
「あ?なんだテル、こんなの好きなの?さすが童貞は妄想力がたくましいね」
「人の感性の半分は妄想でできています」
「なにそれ。誰かの言葉?」
「いや、なんとなく言ってみた」
俺はまた笑った。
「だからなんだよ」
「なんもないって。人とまともに話すの久しぶりだから、笑いバカになってるのかも」
「なんだそりゃ。俺が連絡しても出なかったクセしやがって」
「ああ、すまん。そういや言ってなかったな。俺、今バイトしてんだわ。そのあいだ電源切ってるからさ。多分気付かなかった」
「バイト?おまえが?」
今度は香田が笑う。
「なんだよ。おかしいか?俺がバイトすると」
「いや、ってことは、順調なのかなぁって。甲斐甲斐しいおまえ。なんか笑える」
「なんも順調なことなんかねーぞ。毎日怒られてばっかだし」
「そうじゃなくって、例の彼女のこと。おまえにしちゃ、うまくやってるみたいじゃん」
今度こそ俺は心から笑った。
そして、
「んなもんとっくにふられたよ」
おもしろいネタ話でもするように、腹を抱えた。
そうしたら香田の奴、クスリともしやがらねえで、
「あ?なに?」
なんて、急にマジな顔で返してきた。