超レ欲ス

「なんだよ」

「いやべつに。香田がそれ持ってんのがおかしかった」

「あ?なんだテル、こんなの好きなの?さすが童貞は妄想力がたくましいね」

「人の感性の半分は妄想でできています」

「なにそれ。誰かの言葉?」

「いや、なんとなく言ってみた」

俺はまた笑った。

「だからなんだよ」

「なんもないって。人とまともに話すの久しぶりだから、笑いバカになってるのかも」

「なんだそりゃ。俺が連絡しても出なかったクセしやがって」

「ああ、すまん。そういや言ってなかったな。俺、今バイトしてんだわ。そのあいだ電源切ってるからさ。多分気付かなかった」

「バイト?おまえが?」

今度は香田が笑う。

「なんだよ。おかしいか?俺がバイトすると」

「いや、ってことは、順調なのかなぁって。甲斐甲斐しいおまえ。なんか笑える」

「なんも順調なことなんかねーぞ。毎日怒られてばっかだし」

「そうじゃなくって、例の彼女のこと。おまえにしちゃ、うまくやってるみたいじゃん」

今度こそ俺は心から笑った。

そして、

「んなもんとっくにふられたよ」

おもしろいネタ話でもするように、腹を抱えた。

そうしたら香田の奴、クスリともしやがらねえで、

「あ?なに?」

なんて、急にマジな顔で返してきた。

< 183 / 235 >

この作品をシェア

pagetop