超レ欲ス
「うっせえな!どうせ俺は、切られる側の人間なんだよ!切る側にいっつもいて、切られる自覚のないおまえといっしょにすんじゃねえ!間違ったのか?相手を優先しようって思って、尊重しようって思ってやってんのに、なんだよそれ!なんでなんて俺が一番訊きてえんだよそんなこたぁ!知るかよそんなもん!」
香田の襟首に掴みかかる。
「シャツが伸びんだろ、こんボケ!」
弾ける視界。
殴られた。
バチン。バチンバチン。
都合三回。
眼前が弾ける。
じわっと瞬間的に広がる痛みと、たとえようのないひどい脱力感。
ぺたんとその場に無様に座り込む。
泣いている。
鼻からは血が出ている。
それを見て急速に冷静になっていく。
「あ、あ!血、血が染みこむ!床が!コレ、鼻血!紙!こーだ!」
慌てて背筋を伸ばし上を向いて止めようとするも甲斐なし。
香田の部屋のカーペットにダボダボと豪快に献血する鼻。
目からは涙のおまけ付き。
「これ」
ごすっと後頭部にティッシュ箱が放られる。
カド当たったぞ畜生!
ともかくそれを急いで鼻に詰め込み、なんとか血を止めることに成功する。
「あーあ、すまん。汚れたな」
「どうでもいいよ、床なんか」
血が抜けて頭が冷えたのか、オロオロと床の心配をする俺。
一分前の感情の爆発が信じられないほどの狼狽っぷり。
ぽふぽふとティッシュペーパーでなんとか取れないか試みたりしている。