超レ欲ス
……不意に会話が途切れた。
志田はもとよりお喋りな奴ってわけじゃないから、俺から話を振らないでいると、こうしてむず痒い沈黙がよくやってくる。
「……なあ、彼女とどう?」
俺は話題に困り、しかし沈黙に耐えきれずこんな放っておけよな質問をしてしまった。
「ん?どうってなんだ?」
志田は「卓球」を眺めたまま訊き返す。
「え……えっと、なんかあったか?B組の近江《おうみ》しぶきだろ、相手。香田のお喋りが聞いてもないのに教えてくれてさ」
「あぁ、そのこと?土曜日に告白された」
「え?ひと月前じゃなくって?」
「うん。なんでだ?」
「……いや、おまえ、ひと月ぐらい前から昼休み、隣のクラス行くようになってただろ?だから、そん時から付き合ってたんだと思った」
「違うよ。しぶきとはその時から友達になっただけ。告られたのはこのあいだの土曜日」
こんなことをケロッとしたふうに言う同級生に、俺は少し気圧される。
しかしそれ以上に好奇心が勝ち、続けざま訊いてしまった。
「で、どうなった?」
「うん。付き合ってる」
そうじゃねえよ!
「なんか進展は?」
「だから、付き合うことになったのが進展。なに期待してんだ、べつになんもないぞ」
げっ、やばい。
またやっちまった。
「あー!すまん。好奇心がな。ヘヘヘ、他人に言うもんじゃないよな。そんなハナシ」
「いや、いいけどさ。テルはいんのか?そーゆう奴」
「え」
「付き合うとか、好きな奴とか、そーゆう奴」
「好きな奴?いねーよ。いたらもっと浮かれるだろ、たぶん」
「んー。そうか。悪かった」
そう言って、志田はまた黙った。
俺もまた、何も言うことができなくなってしまった。