超レ欲ス
「うっとうしいな。遠泳でもするか」
そうそうに見切りをつけて香田が言った。
「おれ泳げないよ」
とか言いながらちゃっかり浮き輪なんぞ持参していた浜野。
「とりあえず海入らない?暑いんだけど」
どこまでもマイペースな志田。
まったく。
野郎四人で海。
「色気ないなぁ」
言いつつ走った。
「泳ぐぞ、ちくしょう!」
海へ走った。
浜を蹴った。
熱かった。
親子が砂で遊んでいるのを横目に見る。
海に入った。
今度はうって変わって冷たかった。
ひとつの浮き輪でイチャつくカップルのわきををすり抜ける。
腰まで水に浸かった。ぼけた頭にキーンと響いた。
「あ!テメー、なに先行ってんだ!待てコラ!」
香田も来る。
浜野も来る。
志田も来る。
それならまぁとにかく泳ごう。
イヤなことは忘れて。
そこだけこんがり不格好に日焼けした腕で目一杯水をかき、俺は人のいない沖へと向かった――。