超レ欲ス
「今日だって見ただろ?あの人の群れ。女だっていっぱいいたじゃないの。ひとりの女にとらわれるなんて、じつにバカらしいことだと思わんか?ほら、アレ見てみろ」
香田が指さした先には、俺たちと同じく海からの帰りであろう大学生とおぼしき一群。
「なんだよ」
「アレ、たぶん大学のサークル仲間かなんかなんだろうけどさ。見ろよあの野郎ども。いかにも下心ありますってなツラして女のこと見てんだろ。女も女で、それもまたいいかなぁってな調子でさ。なにしに海来てんだってな感じだろ?焦ってるとあんなふうにヨユーないみたいに映るようになるぜ。あぁダサイダサイ。な?」
「俺には輝ける青春を謳歌している若き男女に見えるけど――」
女の子に縁のない俺と不自由しないおまえの価値基準をいっしょにされるとすごく困る。
「――あれ?」
「ん?なんだ、あんなかに好みの女でもいたか?ん?」
「違うわい!うーん。いや、やっぱなんでもない」
あの大学生野郎のうちのひとり、どっかで見た気がするようなしないような……。
……いや、そんなわけないか。
ああいうギャル男っぽい奴ってどいつもこいつも似たようなふうに見えるし。
それでそんなふうに思えただけだろう。
その後、行きと同じく一時間半ほどかけて地元の大場駅に到着し、さて解散かと思いきや、
「さて、節約した金を使うときが来たな!」
香田がたかだか宣言してそうではないとわかる。