超レ欲ス
第一章


例えば、……である。

俺が今、突然何らかの事情でポックリ逝ってしまったとしたら、果たして泣いてくれる奴はいるのだろうか?

……いや、俺はここで、「家族」とか「親戚」とか「友人」なんていう、当たり前な答えを求めてるんじゃない。

俺が言ってるのは、もっとでっかいスケールでのお話だ。


つまり、「俺が死んだら泣いてくれる女はいるのか?」ってことなのである。



…………。



アホか。

てめーはいったいこんな格好で何を気取っているのか。


すぐさま自分につっこみを入れてやる。

なんでまた俺はこんな思春期なりたての中学生みたいなことを考えるに至ってしまったのか。

その答えは我が右手にある。

その右手には何やら鼻水によく似た粘性の液体により濡れたトイレットペーパーが握られていた。

もちろんよく似たといっている時点で鼻水ではない。

紙を濡らすこの白っぽいのは、精液である。

俺はつい今しがた果てたところであった。

まぁそんで、世の健全な同年代の男性諸君なら当然経験したことがあろう、コトが終わった後にやってくる虚無の時間。

なんでかわからんが無性に切なくなってしまう、あのひと時。

俺はアレにあてられていた、というわけである。



なんだそりゃ。



そう、なんだそりゃ、だ。

それだけなら単なる束の間の憂鬱に過ぎないはずなのだが……。

どうにもコトに至る動機が動機だったために、俺はなかなかに沈み込んでしまっていた。


もうヒドイね。

ある意味命がけだよ、まったく。

たかだか手淫イッパツで俺ってば、軽うく鬱になりそうだもの。

あぁそうだ。チキショウめ……。

それとゆうのも全部あのバカのせいだ。そうに違いないのだ。

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