超レ欲ス



薄暗くって狭い部屋。

天井にはミラーボールがゆっくりと回転していて、室内の妖しさを盛り上げている。

静かな室内にはムーディーな音楽が流れ、その場所が外とは隔絶された空間なのだと錯覚させてくれる。


――って、こんないい方してみましたが。


「カラオケじゃん」

「ダメ?」

「夜の町なんて言い方するから、どんな怪しい店に連れて行かれるかと思った」

「あれ?テル、そっち方面期待してたの?悪い!それなら残金が足りねえや」

香田はけっけっけと笑う。

なんかすっごいムカつくんですけどこの人。

「やなことあったときはさぁ、でかい声出して歌ってみるとスッキリするぞ」

「嶋村、おれも今夜はとことん付き合うからさ。うわぁ、なんかクサイ台詞だなぁ」

「ハルミは面食いだからな。テルが悪いってことはないと思うぞ」

「な、し、知ってんの、おまえら。なんで?……あ!」

俺は香田をじろっと睨んだ。

「だって今日はそういう意図で、みんな集まってんだぜ」

当の香田はあっけらかんと言う。

他のふたりは……。

クソ。

からかいのひとつでも入れてくれたら俺だって心おきなく怒り狂えるってのに……。

「そうか。じゃあ歌わなくっちゃしょうがねえな。だって、もう今この瞬間がイヤで仕方ねえもん」

精一杯強がってから、俺はマイクをとったのだった。

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