超レ欲ス



「ねえ、テル。姉ちゃんいつ帰ってくんの」

二段ベッドの上段から、タクはこうして同じことを毎晩訊く。

この夏のあいだ、ずーっとである。

先日までなら俺は、

「知るかよ。本人に訊けよ」

という無理な意地悪を言ったであろう。

だが、

「父さん、いつ帰んの。いつまでケンカしてんの」

今日は質問が前よりも多めだった。

そうなってはさすがに俺だって兄貴の端くれだ。

意地悪く本当のことを言うわけにはいかなかった。

「親父が倒れたって言えば、ハルだってすぐ帰ってくるさ。そしたら親父は元気になって、ほら、ケンカだっておしまいだ」

「そっか……。なんでケンカするんだろうなぁ。生理は月に一回だって聞いたのにな。姉ちゃん病気じゃねえの」

「そうかもな」

今日はちゃちゃを入れない。

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