超レ欲ス
親父が過労で倒れたのは九月一日早朝。
つまり今朝のことだった。
娘が家にいないストレスを仕事にぶつけていた親父は、その無理がたたったのだろう。
仕込みをしている最中に青い顔して倒れているのを俺が見つけて、すぐさま救急車を呼んだのだ。
幸いと病状は大して危険なものではなかった。
三日入院して、明後日には帰ってこれるという話だ。
念を入れておふくろは、七味亭を二週間臨時休業とした。
親父のことだから放っておけば病み上がりだろうとすぐに無理して店を開けようとするだろうから。
救急車に付き添っていったおかげで、俺は今日の始業式には出席していない。
ケータイの電源もずっと切っていたからメールの着信があることに気が付いたのも夕方だった。
まぁ今こっちは放っておく。
ともかく。
夕方に電源を入れた俺はすぐに春巳のケータイに電話をしたが、あいにくと留守電になったので多少大げさにしてメッセージを残しておいた。
だが、今日のあいだにハルが病室に現れることはついぞなかった。
バカな奴だ。
親の心子知らずにもほどがある。
俺はケータイを見つめて、ぜったい離さないようにギュッと握る。
「ま、明日にゃ見舞いに来るだろうさ」
俺は自分の表情をタクに気取られないよう、努めて明るく軽い口調で言った。