超レ欲ス



病院からの帰り道。

赤い目を隠すように俯き、タクと手をつないでいるハルと並んで歩きながら、俺はケータイを取り出し昨日送られてきたメールを開いた。

単調で簡素でなんの装飾もない、男が書いたみたいな懐かしいそれは、まったく何のために送られてきたものなのかわからなかった。

『連絡下さい』

とだけ添えて、電話番号が書かれている。

簡潔だが不可解だ。

そこで俺は、ひとまずメールで、

『ゴメン。昨日ちょっとゴタゴタしてて連絡できなかった。どうしたの?』

と送ってみた。

パチンとケータイを閉じる。

そんで隣でシュンとしているお嬢ちゃんに声をかけた。

「ハルさぁ」

「ん?」

「明日、なんか作ってやれよ。親父に」

「なんでよ」

「料理、勉強してるんだろ?」

「……タク、しゃべった?」

隣を手ぇつないで歩く弟をにらむ嬢ちゃん。

「あう」

弟は奇声を上げる。

よく見れば、つないでいる嬢ちゃんの手には青筋が……。

アレは痛い。

「ま、退院祝いってことで、一回だけ。な?」

ハルはしばらく何も話さず黙々と歩いてから、

「私が言う材料、テルとタクで買ってきてよね」

と、ぶっきらぼうに言った。

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