超レ欲ス



大山が鳴動してネズミ一匹。

それならば、俺ごときがいくら足掻いてみたところで、木の葉一枚浮かすことも出来ないだろう。

いやはやまったく、今回はそれを思い知らされた。

明日は親父が退院するので、ハルが料理を作るらしい。

俺の言が作用してるんだから、こりゃあ俺、ふたりの仲もちにひと役買ってるんじゃないの?

とか思いたいが、いや、そうでもなかった。

昨日の時点、いや、本当は始めからこのふたり、ケンカなんざしていなかったのかもしれない。

俺の見識もまだまだ坊やさんだな、と思った。

俺が病院に着いたとき、ハルはすでにいて、おふくろといっしょにキョロキョロと辺りを見回していた。

俺が来るのを待っていたらしい。

声をかけるとなんとハルの奴、すでに親父に会ってきたと言うではないか。

聞けば俺との電話では親父がどの程度の病状なのかいまいちわからなかったから、本人の姿を見てまず確かめたかったのだとか。

そういうことかとその時は納得したが、どうにもハルの様子はおかしかった。


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