超レ欲ス
「失敬。もっかい言います。今ドコですか、浅瀬さん」
だからもうこっちだってそれを隠そうともしてやらない。
『あいにくと、どこの嶋村さんともつかない嶋村さんに自分のことを話す気になれません』
「ああ、これまた失敬。先ほどあなた様こと浅瀬晴美様にコーヒーを二杯ほどごちそうになり、右の頬にはおビンタまでごちそうされました、嶋村照巳と申します。それで、今あなた様はどちらにおられますのでしょうか!」
『嫌みな言い方。嶋村くんって、ホント歯に衣着せる人だったんだね。今まで騙されてた』
「そっちこそ、歯に衣どころか肝心なことも言わないで、勝手に納得されて出ていかれも困るんだよね」
『あー最悪。キミだってわかってたらとらなかったのに』
「俺は最高。よくぞ今までかけなかったと自分を褒め称えてやりたい」
『性悪』
「そうかも。最近自分でもそう思う。で、どこにいるの?」
『見えてるクセに』
「ああ、そう?けっこう。目も合わせてくれないから、俺のこと見えないのかと思った。電話にして正解だった」
図書館の窓ガラス越しにようやく彼女と目が合う。
俺はケータイを切り、入り口の自動ドアをくぐった。