超レ欲ス
終章

山堂川をさかのぼって、白子川と合流するところよりさらに三キロほど川上に行くと、川の東側には天教寺という寺がある。

志田が泳いで逃げてきた、例の寺である。

そこの霊園には、じいちゃんも眠っている。

今日は彼岸でかつ日曜日だったので、家族みんなで墓参りをすることになっていた。

盆休みは家族から逃げていたので、俺にとっては春に来て以来おおよそ半年ぶりのお参りだった。

じいちゃんが死んでからごちゃごちゃしていたうちの家族仲は、ひとまずまぁこうして、いっしょに並んで墓を拝めるくらいには修復されていた。

俺自身は無神論者を気取っているつもりだが、こういうところに来ると、なんというか、仏さんとかいてくれてもいい気もしてくる。

はいはい見てますかおじいさま。

あんたのお気に入りだったハルは、今じゃすっかり、にっくき親父と仲良しこよし(……は、ちといいすぎかな)ですよ。

気丈だと思ってたでしょ。

意外に涙もろい子だったんですよ、ハルって。

あんた泣く子にゃ厳しかったからね。

そういやぁ、俺もよく泣いたから、じいちゃんには叱られたな。

それ見てたからハル、泣くのが苦手になったんじゃないかなぁ。

いや、べつにじいちゃんを責めてるわけじゃなくてね?

――墓に向かって手を合わせながら、なんだかそんなバカみたいなことを考える。

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