超レ欲ス

横目にハルを見た。

眉間に皺をよせてぐっと目を閉じ、なにか必死に拝んでいらっしゃる。

相変わらずご執心である。

その向こうのタクも見た。

目を開いたまま、手だけ合わせていらっしゃる。

相変わらずバカである。

反対隣では、親父とおふくろが静かに手を合わせている。

一番最初に拝み終えてしまったのは、やはり俺だったようだ。

だって俺には今さらじいちゃんに言うことなんて、基本的には何もないし、他のご先祖様は知らないから、どうにもこんなもんになってしまうのだ。

タクは俺が手を下ろすと、もういいのかな、というふうに自分も手を下ろした。

バーカ。

続いておふくろが手を下ろす。

後のふたりは長い。

放っておいたらこのまま一日中拝んでるんじゃねえの?ってな感じだ。

どっちが先に手を下ろすか、頭の中で賭けてみる。

……なんてバチ当たりなんだろうなぁ、俺って。

線香の煙が風に揺れる。

その匂いに混じって、霊園のすぐ隣を流れる川のドブ臭いニオイが鼻にかかる。

はっはっは。ムードねえ。

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