超レ欲ス
バカガキまさに有頂天。
そうして俺は、すぐに逃げられるよう近江がこっちを追いかけてくるのを待った。
しかし、問題はそのすぐ直後に発生した。
――近江は、追いかけてこなかった。
その場でペタンと座り込み、わんわんと泣き始めてしまったのだ。
俺は驚いてその場に立ちつくし、ただただ呆然とその光景を眺めた。
なぜならその瞬間まで、俺の経験の中に、「スカートめくりをされて泣く子」なんてものはなかったから。
こんなバカなと信じられず、ふらふらと近江に歩み寄って、思わず、
「追いかけないのか?」
などと救いようのない助言をしてしまうくらい、当時の俺にはショッキングな出来事だったのだ。
そして、次の瞬間である。
一年二組の教室前の廊下でワーワー泣く近江と、困ったようにそれを眺めている俺のあいだに、ザッと教室内から現れた人影があった。
近江の親友で男勝りな、辻という女子だった。
辻は間髪入れず、俺の左頬をスカートめくり上級者もビックリの見事なアッパーカットで打ち抜き、やられた俺は鼻血を出して悶絶しながら、左の奥歯が舌に触れないことに気付いた。
歯抜けバカ一丁。