超レ欲ス
「テル、お母さんドラマ見てから入るから、やっぱ先入れって」
「は、ハル?……春巳?」
「なに驚いてんの?ゾンビでも見たみたいに」
ハルの瞳が鋭く光る。
や、やべ……。
殴ってくるぞ、これ。
「あ、そうそう。タクがテレビ見ながら寝ちゃったから、ここまで運んであげてね」
あれ、そうですか。
いつもと違いますね。ハルさん。
――あ、そうか。
タクのほう優先なのね。ご機嫌的に。
弟想いなお姉さんだこと。
……仮にここで、「親父に頼めばいいじゃん」なんて言った日にはグーどころか踵十連発が飛んできそうだが。
ハハ。
なんて兄想いな妹だこと。
「だからなに。変な顔して。あたしのハナシ聞いてた?」
「あ、ああ。タク連れてきて、風呂入れって。わかった。すぐ行く」
「今ね」
「ああもう。わぁったよ!」
俺はケータイを机に置き、未練がましく一度振り返ってから、ハルに急かされ部屋を出た。
アサセ、ハルミ――
そういやぁ、こいつの名前もハルミなんだよな。
――今更、思い出したようにそんなことを考えながら。