超レ欲ス
かくして俺は、初対面でなめていた相手にガツーンとひとっ飛びで追い抜かされるどころか、あっさりと絶望的なほどの距離を空けられてしまい、かのようなエセ中学生日記を思い描くに至ったのであった。
「はぁ~ッ」「ぷぅ~っ」
溜息をつく俺の気分なんぞ知りませんとばかりに屁をこくケツ。
……臭え。
まるでこの俺のみじめさに拍車をかけようとしているかのようじゃないか。
……くそっ!なんで俺、こんなウンコくせー中で性処理なんかしてんだ?
つーか、今この醜態晒して死んだら100%いねーよ、泣いてくれる女なんて!
思わず涙が滲み出た目を手で拭う。
「――ぐわっ、くっせ!」
すると、トイレットペーパーに収まりきらずに手に付着していたらしい白い液体が顔にぺっとりと付いてしまった。
なんなんだよォ。最悪だよオイ……。
「この夏オススメの香水・栗の花の香り」
不意にそんなどうしようもなく下らない言葉が頭をよぎる。
頭が悪いにもほどがある。
……くっ、ますます情けねぇ。
――と、その時。
「うげ!テル、ウンコしてるー?んだよォ、くっせーじゃん!」
突然トイレの外で声がして、俺の体は反射的にビクッと跳ねる。
……あ、あっぶねぇなコノ野郎ッ!
危うくこの夏オススメ付きの手にキスまでしちまいそうになったじゃねーか!
トイレの外のバカはそんな俺の九死に一生ドラマなんぞ知るはずもなく、甲高い声で叫び続ける。
「テル聞いてんのかよ?入ってんのテルだろ?」
俺は声の主に何をしていたかを悟られないよう、平静を装いつつ応える。
「……うっせーなぁ!ウンコは臭いもんだろうが。ニオイなんか気にするんなら、タク、お前もうクソすんな!」
「あーもう、いいから早く出ろよー。あとがつかえてんだからさぁ」
舌打ちしつつ俺は手とケツを拭き、水を流してトイレを出た。
入れ替わり、タクは俺を押し退けてその中に入る。
そして中から、
「あ!テル、紙もうねーじゃん!」
と、叫んだ。
「……って、お前もクソなんじゃねーかっ!」
思わず俺も叫ぶ。