超レ欲ス
辺りを見回す。
意味はない。
視線を留めておくことができなくなっただけだ。
で、ふと目に入ったものがあった。
机にポスンと置かれた一冊の本。
それはひと月ほど前に俺が買って、まだ読んでないってのに香田に横取られ、今日まで香田家本棚ツアーに旅立っていた、今男女を問わず人気の、とある有名単行本だった。
内容はひと言でいってしまえば、ベタな三角関係を描いたラブコメだが、位置づけや舞台設定なんかが微妙なんだが絶妙で、若者のハートをわしっと捉え、支持を受けてたり受けてなかったりする、ミーハー御用達な仕上がりなのだった。
あの香田をして、「泣けた」というから、俺も期待して読んだものの、……ハッ……、なんのことない。
どっかから持ってきたような、ギャグとストーリーのギャップでウケを狙う、ただ読みやすいだけのショッパイ本だった。
なんだ香田も大したことないな、と思った三時間前。
なんて偉そうなバカである。
……頭の三十ページしか読んでないくせに。
それにしたって、なんでそんなもんが今、目に入る……?
…………ん?
そうか!
閃いた。
つーか最初から閃け。
俺はバカか。
そうだ、バカだな。