超レ欲ス
俺の親父、嶋村七美《しまむらしちみ》はプロの調理師だ。
俺がいつも食堂食堂と呼んでいるのは文字通りの食堂で、一応味には定評のあるレストラン「七味亭」は、俺の家であり親父の店である。
一階はすべて食堂と厨房。
そして二階が居住スペースになっている。
ああ。といって今俺は、客の入る食堂側にいるわけじゃない。
家族用の食事スペースは厨房の反対側にあるのだ。
まぁ食堂っつっても毎日プロの味が堪能できるのかといえばそういうわけでもなく、昼の弁当はたいてい冷凍食品だったりするのだが。
それにしても、唐揚げに春巻き……。
今あんまり胃に来るものは食いたくないんだがな。
まぁ仕方ないか。
厨房に入り手を洗い、それからゴハンをよそって調理台の上に皿に盛って置かれた唐揚げと春巻きを拝借。
ついでに今日の弁当はいかがなものか確認する。
……ハルのだけ心なし手作りの感が多めに漂うのはなぜなのか。
そして、俺のが一番おろそかな感が……いや、皆まで言うまい。
どうでもいい。
気合い入れられても気持ち悪いだけだしな。
食堂へ戻りメシをかっ食らう。
頭の中では五十八回目の自己採点。
いても立ってもいられず、さっさとおかずまですべて飲み込み、食器を流しに戻して部屋へ帰還。
で、すぐさまケータイを確認。