超レ欲ス



「うぇ!テル、もう起きてんの?」

と巧巳が背後のベッドから声をかけるまで、俺は一切の感覚を目前のページだけに向けていた。

昨日バカにしていた、例の本だ。

読みやすいだけで無意だと三十ページで投げ出した、あの本だ。

それが、気が付けば残り数ページほどまで一気に読んでしまっていた。


あれ。なぜに?


そりゃまぁ、確かに昨日は浅瀬晴美のことで頭がいっぱいで、何も手につかなかったというのがある。

だから中途半端で投げ出してケータイを握った、というのが一番大きい理由ではある。

だが、それにしたって序盤の盛り上がりはそれほどでもなかったし、オチもその時点である程度読めるぐらいのベタな本だと思った。


すいません。とんだ思い上がりでした。


今の俺の気分、お釈迦様の手のひらの上で踊り狂ったお猿さん。

反省だけなら猿でもできるが、じゃあ俺は猿以下なのか?

どうやらそのようである。

自分のバカさにまたもガックシ。

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