超レ欲ス
あまりにも泣いた早起きこと俺に対する皆の反応がうっとうしかったので、俺はいつもより三十分ぐらい早く学校へ向かった。
案の定、校庭はまだ運動部が朝練してるわ、どの教室にも誰もいないわで寂しい思いをすることになったが、うちのクラスだけはそうでもないらしかった。
俺は席に着き、俺以上にやたら早く登校している同級生に声をかける。
「おはよう。浜野、いつもこんな早いの?」
俺の右隣の席に座って読書に没頭していた浜野拓也はその声でようやく気がついたように、こっちを向いて、
「ああなんだ。嶋村だったのか。こんなに早くから誰が来たかと思った。そうだね、おれはいつもこんなもんかな。うん」
と返してきた。
挨拶はしないのかキミは……。
「なに読んでんだ?」
「これ?べつに、適当に図書室で借りた本だよ。そんなに面白くない」
「ふうん。俺はかなりヤベー本読んだぞ」
「ああ、昨日のヤツ?」
「なんだ、わかったか」
「香田が泣いたんだってね」
「俺も泣いた」
それを聞いて浜野は、あははとバカにしたように笑った。
ふん、昨日の俺を見るかのようだ。
「そんなにいいの?それ」
「イイ。俺も最初はあなどってた。でも読んでみたら、ヤバイ。俺らみたいな奴らにはシンクロ率がヤバイ。借りたきゃ言えよ。いや、むしろ貸すから、読んだほうがいい」
「そう言われると読む気が失せるなぁ」
浜野はなにが不満だったのか、視線を手元の文庫本へと戻して「もうそれには興味ありません」といった態度を示した。
「なんで。面白いって言ってんのに」
「面白いんならいいじゃん。みんな読んでるし、おれが読む意味もないよ。そんな本なんて」
コイツの言うことはたまによくわからん。
なんでみんな読んでたら自分は読まなくていいなんていう結論になるんだ。