超レ欲ス

「おまえ本好きだろ。いつもいろんな本読んでんじゃん。だったら読んでみてもいいじゃねえか。浜野の評価とか聞いてみたい」

「……やだよ。そんなうぬぼれたことしないよ。そういう分析するのって作者に失礼なんだよ。本を読んで、自分が感じるものがあったら、それでいいんじゃない?他人に訊くもんじゃないだろ。本なんて結局暇つぶしじゃん。みんな知ってる本じゃ暇がつぶれないじゃないか。面白いのかつまらないのか。主人公が男なのか女なのか。目線は主人公か第三者か。エンターテイメントか純文学か。有名な本じゃわかっちゃうだろ。だったら適当に自分で選んだ本を読むよ。おれは何も知らないゼロから、無駄に時間を消費するために本を読むんだ」

「わけわからんこと言うな」

「どんな本かわかればそれでいいし、わかったんならもう読まない。知らない本だから読む。でも、それが面白いかつまらないか、どういうふうに面白いとかは、知ったことじゃないってこと」

やっぱり理屈っぽい奴だ。

しかも、なんか破綻してないか、その考え方。

「おれにとっては本は特別なものじゃないの。趣味じゃない。他にやれることがないから読んでるだけ。おれのこと、本好きだとか読書家だとか思うのやめろよ。知ったふうに」

なんだそりゃ。知るか。

本ばっか読んでる奴がいたら、そいつは本が好きだと思うだろうが。

「つまらんことにこだわるな、おまえ」

「つまらないと思うならいいよ」

「ケケケ!何怒ってんだよ。本がほんと嫌いなら読まないだろ。なんだかんだで浜野はやっぱ本好きなんだよ」

「…………」

あーそうすか。

そんでダンマリ決め込むんだ。

ならいいですよ。

こっちだっていいですようだ。

――ん?

ああ、そういうことか。

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