超レ欲ス


失恋といえば失恋だし、始まってなかったのだからそうともいえないといえば、そうなのかもしれない。

しかしまぁ、目の前にいる奴はそのどちらとも関わっていて、だけれどそのどちらとも彼にとっては知ったこっちゃないのだった。


「しだっ!」

俺は涙を流したまま目を見開いて、ここで会ったが百年目っとばかりガタタンと立ち上がった。

「わ!なに泣いてんだよ。テル!」

人がまだまばらな八時を過ぎたばかりの教室内においても、俺の号泣っぷりは誰がどう見ようと異質だった。

「おまえと近江が死んじまって、俺は狂って死ぬんだぁ!おろろろろ~ん!」

混乱している。

明らかに混乱しているとわかっていながら、俺は涙ながらのドラマティックを抑えることができなかった。

「なんで、なんで~!こんなことに~!」

志田の肩を掴みガクガクと揺さぶる俺。

危ない人だ。

ヤバイ人だ。

やめてくれ。

お願いだから落ち着いてよ俺。

「わ、わわわ。どうした、なんだ、テル。どうしたってんだ」

「ひぐ。うう……。この本が……コイツがよう……」

「本?」

俺は机の上に置かれた単行本を指さして、もう片方の手で顔を拭った。

すると、

「ロクロベじゃん。なんだキミ、ずいぶんベタなの読むんだね」

と志田じゃない声が返してきた。

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