超レ欲ス
「なぁ、どんな感じだった?号泣?せせら泣き?むせび泣き?えーっと、あと泣き方ってどんなんあったっけ?」
おいおい、俺が崇高な本を読んでる最中、おまえは他人をおとしめたくて必死かよ。
この気位の差。
ふっ、なんともガキなことよな。
まったく、相手をしてやってる志田も気の毒な。
「ハナは垂れてたな」
「それ、女の子見てた?」
「うん」
「ギャーハハハー!ちょい待って。誰、それ。一番近くにいたの」
「うーん。ハルミかな?」
「ハルミ?誰?このクラスにいた?そんな奴」
「隣のクラス。B組の浅瀬晴美ってヤツ」
「俺ちょっと、隣行ってく――」
「待て」
ガタッと立ち上がろうとしたバカの襟首を、本からは目を離さずに、ぐあっしとふん掴む。
「なんだよ。俺はちょっと急務があってだな……」
バカがなんか言おうとしたのを、「うるせえ」と制し、やはり本から目を離さず、冷静に、努めて冷静に。
「チャイムが鳴った。立ってはいけない」
――努めて冷静に、普段絶対言わないような極めて不自然なことを口走ってしまったのだった。