超レ欲ス
朝の騒動。
香田ひとりが何かやたら盛り上がってやいのやいの言っていた、俺の泣き顔探求事件。
バカのひとり祭り。
それがなぜ、こうも大ごとになった?
原因はもちろん香田、それから――今俺の隣に座っている、コイツのおかげである。
浜野拓也は眉間に皺をよせ、憮然と正面を見つめている。
その頬には殴られた跡。
鼻にはティッシュペーパーがくりっと詰め込まれている。
付け根が赤いことから、それが鼻血を止めるためのものだとわかる。
浜野の見据える先には、これまたむっすりと険しい表情をした香田正人が座っている。
ふたりは見つめ合っている。
ただし、それはラブリーなものではなく、お互いあらん限りの殺気を漂わせながら。
気にしないバカと気を遣わないバカは、ここに来て火花を散らせていた。
なんだ?
なんで、このふたりが?
結論だけいえば、ケンカしたからだ。
そんでなんで俺がそこにいっしょに呼び出し食らっちゃってんのか?
簡潔にいえば、ケンカの仲裁をしたからだ。
話しは三十分くらいさかのぼる。