超レ欲ス
俺と隣のクラスの浅瀬ちゃんの朝のやりとりを聞いて、犬並の嗅覚で俺の脳内動向を理解した香田は俺がいくら止めようとしても、彼女を一目見るといってきかなくなってしまった。
よいではないか、よいではないか。
ご無体なご無体な。
あぁ~れぇ~。
体育会系で体の引き締まっている香田を俺の力ではどうこうできるわけもなく、止める俺を振りほどいて席を立ち、今まさに隣のクラスへ向かわんとしたその時。
ガタンと背後で椅子の投げ出される音。
ぎょっとして振り返る俺……の頭上を何かが通り過ぎて直後、今度は香田の方からビシッと何かがぶつかる音。
眼前には誰かの姿。
上を向けば、見たことがないくらい険しい顔をして何やら仁王立ちで右手を前に突き出している浜野拓也。
瞬間、何が起こったのか理解する。
さらに振り返ると、香田の顔に今朝から浜野が読んでいた文庫本が、額から鼻にかけて縦に食い込んでいるのが見えた。