超レ欲ス



「嶋村、ごめん。頭、大丈夫か」

その帰路にて。

香田と別れしばししてから、やっと口を開いた浜野の第一声がこれだった。

「うん?ああ、平気平気。もう痛くもない」

そもそも、ほっぺたに受けた香田の右の方が効いたわけで。

「おまえこそ、そのシャツ、大丈夫か?ずいぶんハデにやったな、香田の奴も。ボタンが取れてるだけならまだどうにか着られただろうけど」

「これか。まぁ、ちょっとミシン目で裂けてるだけだし、自分でつくろうよ」

いや、そこまでしなくてもいいと思うが……。

「……ダメだな、おれ。なんか、こう、よくわからないことで頭に血がのぼっちまって……。変だと思ったろ?」

「うーん。変というか、本当に、よくわからなかったという感じか」

俺の答えを聞くと、浜野は自嘲気味にハハハと笑い、

「こんなんだから、おれっていつもひとりなんだよな」

と言って、黙ってしまった。

俺たちはふたり、横に並んで団地の中へ入っていく。半歩浜野の先導で、何も言わず。話さず。

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