超レ欲ス

「正直言えば、俺は、俺個人としては、おまえにも浜野にも、どっちにも苛ついてる」

『なっ……なんだよ。そんじゃあ、やっぱテルは俺が悪かったってのかよ?』

「どっちが悪いとかって問題じゃねえよ。どっちにも味方できねえっつってんの。おまえは余計なことしようとして、浜野も余計なことしたんだ。未遂で終わってるけどおまえだって俺からすりゃ、本当に迷惑だったっていうハナシだ。おまえはな、考えなしなんだよ。いつも自分と俺が同じだと思って動こうとするだろ。そうじゃねえの。俺だってバカだけどバカなりに考え持っているわけ。いっしょじゃないの」

『だから、それ思って、俺はおまえとそのB組の娘をくっつけてやろうとしたんじゃねえか。それを浜野の野郎がぶち壊しにしやがったから……』

もしもーし?

聞いてましたかー、ボクのハナシィ。

……やっぱりコイツにこの手の感覚を理解すんのは難しいのか。

「それが余計なお世話だってんだろ。俺と浅瀬ちゃんのことなんざ放っときゃいいんだって。そう考えろ。えっと……他人の恋路に介入すんの、とか、それってヤボなわけ。わかる?」

顔あっつ。

恋路とか……。

自分で言うかよ……。恥ずかしい。

今日こんなんばっか。なんなの俺?

そんな俺の赤面暴露に対し、電話の向こうの香田はやけに静かになった。

「……おい。なんだよ。なんか言えよ」

『……ああ。そうか……』

「え。なに?」

『俺……、そっか。ああ、俺バカだ。なんだそれ。そうか。ああ……』

何かに得心して「ああ、そうか」と繰り返す香田。

なんだよ気色悪いな。

『テル!俺は気が付いたぞ!』

「何にだよ」

『靴の裏のガムだ!』

「……ロクロベ?」

『ああ。アレはこういうことだったんだな!』

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