超レ欲ス
靴の裏のガムとは。
俺が今朝まで読んでいた単行本に出てくる例え話である。
主人公が主要人物三人の中で、自分をガムに、友人を靴に、想い人をそれを履く人間にそれぞれ例えているのだ。
主人公の劣等感や、想い人に対する羨望、友人に対する嫉妬などの感情をこのような言い方で表現していたのだった。
確かに割合印象的なシーンではあったけど。
……で、それがどうした。
それが今どう関係する?
『俺、靴の裏のガムのハナシ読んでるとき、スゲー自分と重ねちまったんだよ。なんでだかわかった。俺、ガムなんだよ。人に、靴に踏まれるダメなガム。ホントは役に立ちてえのに、いつもバカばっかしちまって、全部ぶっ壊すダメなヤツ』
「それのどこがおまえだ!」
そんな自覚もないクセに。
この唯我独尊厚顔無恥《ゆいがどくそんこうがんむち》が!
『いや、そうなんだけど、なんていうのかな、自分に気が付いた。俺、うまく言えないけど、今日な、自分ではイイコトしようとしたつもりなんだよ。でもそれが、いつも誰にでもイイコトじゃねえんだよな、って』
気付くの遅くね?
……でも、そうか。
わかる気もする。
今の香田の気持ち。
ソレを知ってはいても、実感することができなかったんだろう。
ひとつふたつ、ちょっとしたきっかけさえあれば、誰だって解ることなんだがな。