超レ欲ス
第二章


「これ、よかった。ありがとう。また、なんかオススメあったら教えて」

ウソ。

「これも面白かった。浅瀬ちゃん、ほんと本のチョイスが秀逸だよね」

はいウソ。

「今回はさ、主人公がよかった。この台詞は……」

はいはいウソウソ。いい加減にしろ。



浅瀬晴美は本当にいろいろな本を読んでいた。

俺が借りていた本を返し感想を述べると、「これも読んでみなよ」とすぐに新たな本を見繕ってくれ渡してくれるほど、家には本がたくさんあるらしかった。

他人の感想を聞けるのは楽しいとも言っていた。

その……、接点が切れず、俺なんかのためにわざわざ本を選んでくれるのはほんとありがたくって、そのたびに本を眺めてはにやけたりしているのだったが、ひとつだけ俺の中で消化しきれない、由々しき問題があった。

俺が初めて借りた「チリと僕」というタイトルの、海外の作家の本。

これからして、どうして彼女がこれを手に取り、読もうと思うに至ったのか疑問に思うほど、高校生向けではなかった。

難解すぎるわけではない。

哲学的なわけでもない。

海外特有、時代特有の文化が共感できない、とかでもない。

平凡で、何がどうということもなく、これといって光るところがない。

時代の中に埋もれる、たまたま本になった本、といった印象を受ける。

どうにも味気なく、石を食ったような内容で。

とにかく、えっと、うむむ……。

平たくいってしまえば、……面白く……ないのだ……。

そりゃあ、本を読んで受ける印象なんて、十人十色だ。

そんなことはわかっている。

俺の主観で面白く感じられないからって、それがダメなものであるなんてことはない。

そこまでうぬぼれているつもりもない。

しかし大局的に見てみたとしても、おそらくこの作品はそれほど優れたものではない、ように感じられた。

それは、その後に借りた本も同じで……。

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